ラズパイ+VolumioでBluetooth対応MP3音楽プレイヤーを自作してみた【前編】準備物/OS選び

はじめに・前編のポイントは「必要なハードと、採用するOSの比較評価」
今回の記事は業務でやったことではなく、店主平山が趣味で作った音楽プレイヤーの制作過程のまとめです。それなりに需要がある気がしたので、記事にしておきます。この記事は【前編】【中編】【後編】のうちの【前編】にあたります。主な内容は以下の通りです
- ラズパイ音楽プレイヤー制作に必要な部品、道具類
- ラズパイ音楽プレイヤーに適したOS選択と比較評価
- MicroSDカードへのOSインストールオススメ手順
かんたん用語解説・必要な前知識
- ラズパイ(Raspberry pi)… 超小型のパソコン基盤。主な用途としては、各種家電や自作ロボット等を制御するためのマイクロコントローラ。「パソコンを自作したことがある」レベルの人なら、比較的カンタンに取扱える。別売りの色々な部品やセンサーなどを取り付けて、さまざまな機械を自作できる。家庭用IoT機器の普及や、各種デジタル教育の現場で一役買っている
- Volumio(ボリューミオ)… イタリアの音楽プレイヤーメーカーのブランド名でもあり、自社製品に使われているOSの名称でもある。商用のクオリティでありながら、オープンソースとして一般にも公開されている。ラズパイにも導入可能。機能の一部は有料プランに加入しないと使えないなどの制限がある。
- Bluetooth(ブルートゥース)… 数メートル程度の短距離間の無線通信規格および装置の総称で、パソコンのマウスやキーボード、音楽プレイヤーやスマートフォン、ワイヤレスイヤホンやスピーカー、車載用FMトランスミッターなどに採用されている。
- MP3(エムピースリー)… 音楽データの一形式で、データ量が軽く、音質もそこそこ。多くの音楽プレイヤー等が対応している最もメジャーな形式。
- UI(ユーザーインタフェース)… 対象の機器を操作や設定するための方式、画面構成など。ラズパイ関連OSを扱う場合は、大きく3つの方式(下記)を使い分けます。OSによって対応しているかどうか、少しずつ違います。
- 【本体UI】本体に繋いだ液晶画面でマウス/キーボードで操作。OSによって、最初からポインタで操作できるもの(GUI)と、初めはコマンド打ち込み方式(CUI)のものがある
- 【ブラウザUI】他のパソコンからネットワーク経由で繋いでウェブブラウザ上で操作する方式。大きい画面で操作できてうれしい。
- 【SSH接続】同じく他のパソコンからネットワーク経由で繋いで、SSH接続可能なアプリからコマンド文を使ってデータを書き込んだり設定を変えたりする。Linux 関連の知識が少し必要。前述の1,2は、OS製作者が用意した作業しかできないが、SSHでコマンド送信すれば、それ以外の調整や改造も可能。やや敷居が高いが、今はChat GPTやGrokなどAIチャットを活用すれば、素人でもラズパイのセットアップ程度の技術を身につけるのは難しくないです。
MP3プレイヤー完成までの手順・前編
1,ハードウェアの準備と組立て
用意したもの
今回、私が使用した部材を挙げます
- Raspberry Pi 4 モデルB(中古)… コロナ禍の只中、ヒマを埋めようと思ってメルカリで¥8,000で購入。当時は供給不足で新品は枯渇していました。その後3年ほど放置してましたが、存在を思い出して日の目を浴びたのでよかったです。
- MicroSDカード(64GB)… Nintendo Switch用のカードが余ったので使いました。OSだけ格納できれば良いので、本当は64GBも要りません。まあそれ以下の容量のカードは今時あんまり売ってませんが…。
- 小型タッチ液晶(3.5インチ)&ケースのキット… Amazonで4,500円ほど。ラズパイに部品や端子を挿して、それを包むケースをドライバー1本で組み立てるだけ。画面を映すだけなら難しい設定も不要で簡単ですが、タッチ操作のためのドライバーインストールはやや難易度高い上に、動作する条件や適応OSが厳しいです。購入前に動作条件を確認しましょう。自分は液晶表示だけ出来れば良いと割り切りました。
- 手動スイッチ付き電源コード(USB タイプC)… ラズパイはケーブルを差し込むと起動するのですが、いちいち抜き差しで起動・終了していると端子部分の故障率が高くなってしまいます。なので自分は手動スイッチ付きの電源コードを買い足しました。1,000円程度。
- 設定用パソコン… ラズパイは単体ではセットアップ出来ません。同じネットワーク内から操作する為のパソコンも必要です。
- 設定用カードリーダー… 設定用パソコンからMicroSDカードにOSデータを書き込むために必要
- 設定用マウス、キーボード(USB)… 採用するOSによっては不要ですが、今回は様々なOSを試したかったので用意しました。ラズパイのUSBポートに挿せば動きます
- 設定用LANケーブル… 最終的に無線LAN(Wi-Fi)に接続するにしても、セットアップ時は有線LAN接続しておく方がスムーズです。ほぼ必須。
組立
液晶&ケースキット付属の説明書どおりに組み立てました。キットにもよると思いますが、底板のウラオモテを間違えるなど、アドリブで感覚的に組み立てると、最終的に合わなくなると思うので、よく説明書を見て間違えないように組み立てましょう。
自分の場合は、透明アクリルボードを保護するための白いビニールカバーを剥がすのを忘れていて、いちど組立てなおすハメになったり、ラズパイ購入時にオマケでついてきたヒートシンク(黒い剣山のようなパーツ)が他のパーツにあたってしまうので、泣く泣く外したりしました。

配線・動作確認
組立てが出来ましたら、さっそく起動テストです。ラズパイと液晶を組み合わせた「本体」に、マウス、キーボード、LANケーブル、電源ケーブルを差し込み、スイッチを入れます。正しく組立と配線が出来ていれば、OSのインストールされたMicroSDカードを差し込んでおらずとも、Raspberry Pi の文字が表示されるはずです。機械が動くことを確認したら、次の工程に行きます。
2,OSをインストールしたSDカードの用意
音楽プレイヤー用OSの選択
自作のラズパイMP3音楽プレイヤーを作るにあたり、使用するOSを選ぶ必要があります。いずれもベースはLinuxではありますが、出来ること、取扱い方法、設定の難易度、最的な画面デザイン、機器にかかる負荷など、かなり異なります。自分は最終的に「Volumio」にしましたが、いろいろ自分で試して見た結果をまとめます。
- 通常のRaspberry Pi OS… 非常に使い勝手が良く、出来る事も多いですが、音楽プレイヤーに特化しているわけではないので、プレイヤーとして自動起動させるまでの手順や、余計な目的外の機能の多さによる負荷などで、MP3プレイヤーOSとしては不向きだと判断しました。OS上で「Kodi」という再生アプリをインストールして自動再生の設定して…と手間をかけるぐらいなら、最初から下記のkodi特化型のOSを入れた方が負荷も軽いですし。
- LibreELEC、OSMC… いずれも「Kodi」というメディア再生用アプリだけを起動し動作させるためのOS。ウェブブラウザUIに対応しておらず、小さな液晶でほとんど全て設定しなければならない上、設定の手順を間違えると日本語が文字化けするなどストレスが多かったので不採用。7インチ以上の液晶を使用する場合、音楽以外に動画再生も行う場合は、第一候補かも。
- moOde audio player… ウェブUIに対応しており、高機能でVolumioの次点として候補に入れていましたが、OSダウンロードにひたすら時間が掛かってやり直しが大変だったのと、設定作業中に変更が反映されにくかったり、旧式のNASとの接続に難があったり、細かい点での快適さや質に差を感じました。(Volumioが快適すぎるとも言えます)
- piCorePlayer… ウェブUIに対応しており、非常に軽い簡素な造りの設定画面で、それでいて出来る事にはかなり幅があるようです。が…とにかく設定が煩雑で独特。細かい点まで自分で設定を変えないといけないのに、他のOSと違って設定項目のカテゴリー分類も独特で、探しにくい。例えば「Tweak(微調整)」というタブに色々な設定が突っ込まれていたり、分かりにくさではトップ。
- Volumio… 用語解説の欄で概要を書きましたが、とにかく商用だけあってクオリティが高いです。UIの分かりやすさ、小型液晶での視認性、デザイン、汎用性、ウェブUI対応、スマホアプリでも簡単接続&操作可能、他オーディオ機器(DAC等)との連動、などなど。ただし見た目のスキンは3種類のみ(洗練されていて充分ではあるんですが)、アカウント登録がほぼ必須、一部機能は有料プラン限定、そして(自分にとって)最大の問題点は、Bluetoothスピーカーなどの接続に標準対応していない点です。工夫すれば解決は可能なんですが、難易度が高いです。方法は【中編】の記事で後述します。
OSイメージデータのダウンロード
- はじめに、「Volumio」公式サイトのダウンロードページ(https://volumio.com/get-started/)から、Razberry Pi用のZIPファイルをダウンロードします。
- 2025年7月15日現在の最新バージョンは「3.819」です。今回これを元にセットアップを進めます。
- 公式の「Raspberry Pi Imager」というインストール用ソフトからもダウンロードできますが、作業に失敗した場合など、MicroSDカードを初期化してやり直すそうとするたびに、毎回OSを丸々ダウンロードし直すことになってしまう(時間がかかる)ので、まず公式サイトからイメージファイルを落としておいた方が後々安心です。
- ダウンロードできたら、zipファイルを解凍し、imgファイルを取り出します。
- OSによってはZIPのまま書き込むものもありますが、Volumioの場合は、解凍後の「img」ファイルの方を使います。
ラズパイ公式ツールを使ってMicroSDカードへの書き込み
- Raspberry Pi公式サイト(https://www.raspberrypi.com/software/)から、Rasberry Pi Imager というツールをダウンロードします。
- パソコンにインストールします。(基本的にWindows環境である前提で解説しています)
- パソコンにカードリーダーを接続し、OSインストール用のMicroSDカードをセットし、ツールを起動します。
- 「デバイス」は「RASPBERRY PI4」を選択。
- 「OS」は選択肢いちばん下の「カスタムイメージを使う」から、ダウンロードしておいたVolumioのimgファイルを選択。
- 「ストレージ」はパソコンに接続したマイクロSDカードを選択し「次へ」
- 書き込みを開始し、数分後に完成。Windows OSが表示してくるフォーマットエラーなどは無視でOK。


前編はここまで
中編では、いよいよ Volumio Ver3.819を起動、セットアップし、Bluetoothを有効にする所までを記事にする予定です。


