履歴書のメールアドレス欄のフリガナは意味がない?他国のフリガナ文化や配慮について

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こんにちはパソコンサポート仙台宮城・店長の平山です。

時々ネットで話題になる「アドレスにふりがな」問題。履歴書に記入させて提出させる意味って?

ツイッターやヤフー知恵袋を利用していますと、ちょくちょく目に入るのが「メールアドレスにフリガナ振る意味なんてあります?」といった内容の書き込みです。特に履歴書について、その存在を疑問視するような意見が多いようです。

どうやら、それらの意見はだいたいが若い人から出ているのではと思われます(高校生~大学生のアルバイトや就職活動の際に出がちな疑問らしいです)。彼らの書き込みの文脈から汲み取れる意図としては、英語に馴染めずに日本語表記にこだわるのは日本人特有の愚かしいダサい慣習で、アメリカなどのIT先進国のように電子データで統一すればそんな記入なんて必要ないのに、といった感じですね。

ですが本当に、フリガナも、紙で提出する意味も、まったく無いのでしょうか。

Twitterより。プライバシーに配慮してモザイク処理済み

【答え】表音文字で誤読を防ぎ、物理的な紙を使って証拠能力を担保している

印刷や手書きの文字では誤読しやすい文字がある

「l(エル)」と「1(イチ)」や、「O(オー)」と「0(ゼロ)」など、見た目で区別しづらい文字が複数あります。「.(ドット)」が入る場合は、ボールペンを突いてしまった汚れと区別がつかない場合もあります。

もちろん記入する本人は自身のアドレスを間違いなく理解しているでしょうが、そのアドレスを初めて見る相手は「正解」を文字を目で見て判別するしかないのです。そこで誤解が発生しないように、発信側が行う工夫が「フリガナ」です。

正しくメールアドレスが伝わらず、連絡が取れずに困ってしまうのは、履歴書を提出する相手だけでなく自分もなのですから、フリガナを振る手間を惜しむことこそ、意味が薄い行為だと思います。

フリガナやそれに類する文化は各国にある

このフリガナ文化は、日本特有ではありません。中国語や韓国語、さらにアラビア語や、さかのぼれば古代マヤ語でも、「文字に追加の記述をして誤読しないようにする」という工夫は見られます。ベトナム語などでは、いわゆる「発音記号」が文字自体に付けられています。英語の発音記号については皆さんも学生時代に辞書などで目にされたと思います。

その中でも特に中国語では、もともと表意文字である漢字がメインだったため「音」の表現をわざわざ国の法律で追加して(1958年 中国語表音法)対応しているそうです。それほど、どの国どの言語にとっても「誤読」の対策は重要だという事です。日本特有のダサい習慣ではなく、全世界のスタンダードな工夫なんです。

Wikipediaより。

マヤ文字では、表語文字1字で表記する場合と、音節文字を組み合わせて表記する場合で、わざわざ2通りに書き分けています。文字が発祥したはるか古代から、「読み」を間違えたら困る!ちゃんと分かるようにしよう!という努力は行われています。

電子データより物理媒体の方が証拠として扱いやすいし、意味はある

また、紙書類には様々な情報が残ります。文字や文章自体がもつ意味だけではありません。筆跡であったり、使われているインクであったり、役場や会社で受付を経たという印(ハンコやサイン)がついていたり、そしてその組み合わせの紙が一枚しかないという事実そのものが、重要であったりします。

後で何らかの法的な問題が発生した際、証拠として扱うためにはそういった付加情報が非常に重要です。文字としての情報だけで良い場合は電子的データでも問題ありませんが、履歴書や、様々な行政手続き(裁判も含みます)に使われる公的な書類には「証拠能力」を持たせるために、紙資料が優位なんですね。

たとえマイナンバー制度が普及して国民のデータをほぼ全て電子化したとしても、その前提として「顔」の写真や出生時の手続き書類など、なんらかのアナログかつ物理的な肉体情報が本人確認のための最終的な土台になっているわけです。だから決してアナログ=悪!時代錯誤!全部なくさなきゃ!というものでは無いんです。利便性や必要性の問題として、理由があって残っているわけですね。

採用と解雇に対しての重みも国によって違う

また、解雇や再雇用が比較的簡単なアメリカと、終身雇用が失われつつあるとはいえ法的に従業員の権利が非常に強い日本とでは、人を雇うということに使う神経、気配り、警戒、準備、対策もかなり異なってきます。履歴書についても、電子化すればいいのに!という気持ちも分からないではないですが、それが唯一の正解ではなく、国によって異なるのは当たり前と言って良いかもしれません。

つまり日本の会社としては、より慎重に、文字自体が持つ情報以外にも多くの判断材料を得た上で人物を評価したい、そして公式な書類としてきちんとした書面を残したい、という企業としての論理や意図があるわけです。本人の筆跡であることや、文字の美しさから読み取れる教養や、「とめ」や「はらい」に見られる集中力や気配りの精神など、手書き履歴書にはいくつかの重要なポイントがあります。

【おまけ】アルファベットによる行き違いを防ぐ当店の工夫いろいろ

以下は、当店で行っている、誤解を避けるための様々な工夫です。

誤読が発生しない電子媒体(記入フォーム)を用意

「え?結局ネット上で記述させるの?!」と、まるで上記までの私の記述と反するように思うかもしれませんが、べつに私は「紙資料が最高!デジタルなんてすべて駄目だぜ!」と言いたいわけではありません。それぞれの利点と長所によって使い分けが大事だよ、と言っているだけです。

ですので、お客様からご住所や連絡先などを伺う際に、地名やお名前やメールアドレスなど、電話での聞き違いをしてしまうと、後々ご迷惑を掛けてしまう部分(名前の漢字を間違えられるのも、住所を間違えてたどり着けないのも、普通はイヤですよね)については、事前に会員登録フォームからご記入ください、というようにご案内をしています。音声よりは電子データ(文字)の方が情報ソースとして確実だからです。(ただし感情や体調を知りたいときは音声の方が重要です。要は使い分けです)

口頭ではあえてネイティブ発音でなく、ベタベタな日本語訛りで確認する

また、お客様と口頭で(音声で)アルファベット情報をやり取りする必要がある場合には、ベッタベタの日本語読みをします。「D」を「ディー」ではなく「デー」と読んだりするわけですね。これはそのほうが、日本人相手には通りやすいからです。

自分も学生時代、リスニングの授業で「L」「M」「N」の聞き取りで苦労した経験がありますし、そこで格好つけて流暢に話す事にこだわるより、伝えやすさを重視して、あえて日本語訛りで発音しています。

参考記事:【言い訳】「D」を「デー」と読むのは、おじさんだからじゃなくて、プロだから。

最後に。「格好よさ」よりも、いかに誤解や行き違いを減らすかが重要

当店の方針として全体的に言えることですが、お客様とご一緒に仕事をする上で、カッコよさだとか、イメージだとか、ITっぽさだとか、デジタル優先だとか、そういうことを優先するのではなく、とにかく「相互理解」や「確実さ」の方が、気持ちよくお取引をする上で、とても重要だと考えています。

自分の「こうありたい」というスタイルやイメージよりも、お客様のほうを第一に考えていくと、自然と「相手に合わせて色々と工夫しよう」という発想になるのではないでしょうか。