【解説】ドローン規制強化のニュースについて【背景と意味】

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こんにちはパソコンサポート仙台宮城・店長の平山です。

10月12日のドローン規制に関するニュースについての解説記事です。

一昨日の国土交通省の発表がITニュースになっていましたが、それがどういう意味を持つのか、またその背景について、ITの専門家の観点から解説を加えておきたいと思います。(私なりの解釈と主観に基づいた解説となりますので、その点をご了承下さい)

上記記事の内容をさらに簡単に3行でまとめますと、

  • 国土交通省の発表によると、来年6月20日よりドローンの機体登録が義務化される。
  • 対象は「重さ100g」以上の機体となる。
  • 登録申請は今年12月20日からインターネットか書面で可能

…といった内容になります。これについて以下で解説していきます。

全体的には日本でもドローン規制緩和の流れである。

まず、このニュースを聞いて「規制なんてけしからんなあ」「なんだ日本は遅れてるなあ」「IT後進国だなあ」と思われた方には、もう少しこのニュースについての背景を知ってもらいたい所です。(それがこの記事を書こうと思った根拠です)

実のところ、日本のドローン行政の全体的な流れ自体としては、物資の運搬やさまざまな産業用途など、ドローンの活用範囲を広げられるよう、規制の緩和に向けて協議が進められているところです。実際、つい半月前の9月24日にも、大きな規制緩和が実施されたばかりです。

これは、「十分な強度を有する紐等(30m以下)で係留し、飛行可能な範囲内への第三者の立入管理等の措置を講じてドローン等を飛行させる場合は」という条件を満たせば(要するにドローンをヒモで繋いで、かつ人が近くに来ないように看板などを立てていれば)、以下のような使いかたでも、今まで必要だった事前の申請が不要になる、というものです。

  • 人口密集地上空における飛行
  • 夜間飛行
  • 目視外飛行
  • 第三者から30m以内の飛行
  • 物件投下

と、このように、ドローンを有益に使えるように道筋は作りつつ、でもその一方で悪用は出来ないように(今回の規制強化)、という両面での作戦が進んでいるわけですね。

これまで規制の対象が「重さ200g以上」だったのが問題で、前々から「100g以上」に引き下げられる予定だった。

では何が問題だったのかと言うと、現行のドローンに関連する法律では「重さが200g未満のオモチャ(トイドローン)は好きに飛ばしていいよ」ということで規制の対象外にされていたのですが、それがまずかったんですね。

その結果を受けて、時を置かずして199gでかなりのガチ性能を持つドローンが開発・市販されてしまうようになりました。特にドローン通なら大体知っている、人気の「DJI mini2」といった機種は、小型にも関わらず高画質(4K)動画撮影も可能、カメラ角度も可変式、日本のAmazonでも数万円で購入可能、それでいて200g未満なので規制の対象にならず好きに飛ばせたので、プロからアマチュアまで根強い人気があります。しかし、この性能では流石に「大したことの出来ないオモチャ」とはとても言えません。

そんな状況を受けて、今回のニュースの前からドローンの規制基準は「200g以上」から「100g以上」へ引き下げられることは既に確定していました。(近日中に200g未満ドローンでもきちんと事前申請が必要になる予定だった)今回の登録制導入で基準が「100g以上」なのも、その延長の上にある話です。

防犯上ヤバいので100gまで規制の範囲を広げるのはやむを得ない

そして現状では、ドコの誰ともしれない悪い人が住宅街でドローンを飛ばしていようと、取り締まりが困難なわけですね。

たとえ明らかに不審者が高性能カメラ付きドローンで盗撮やスパイ活動をしているように見えても、そこでおまわりさんが操縦者を捕まえて「ちょっとそのドローン見せてくれない?」と声をかけるためには、根拠となる法律はやっぱり必要です。そこで無理やり迷惑防止条例だのストーカー法だのをこじつけるとか、任意で捜査協力をお願いするよりは、ちゃんと「200g未満ドローン」を対象にした法律があったほうがスジが通るのではないでしょうか。

今どきは自動車どころか自転車だって登録制なのですから、自転車より活用方法の広そうなカメラ付きドローンこそ登録制にすることで、警察官が怪しいドローン操縦者に「ちょっとそのドローンの登録番号みせてくれる?」と職務質問できるようにしておいたほうが、社会生活を送る上でわれわれ一般市民も安心だと思います。

【疑問】でも結局、100g未満(99g)で高性能なドローンが開発されるんじゃないの?

短絡的に「100g基準になるなら100g未満のスゴイのが出てくるだけじゃないの?」と私も最初は疑いましたが、流石にそこまではムリだろうな、という結論に落ち着きました。本体の素材、カメラ周り、内蔵機器(特にバッテリーは重量がある)、風に負けない姿勢制御技術(99gではそよ風でも簡単に煽られる)などなど、大きなニュースになるレベルの技術革新がかなり重ならないと、100gの壁を超えるのはムリだと思います。199gを実現しただけでも、これはスゴいと注目を集めたわけですから…

【余談】特にDJI製品だけはヤバい…と日米の偉い人は考えているらしい

ところで、国際ニュースに敏感な方はこの「DJI」というメーカー名に聞き覚えがあるかもしれません。このメーカ-名は、国際情勢や国家の安全保障の上でも重要な意味を持っています。

  • 業界最大手にして、中国のメーカーである(中国名:大疆创新科技有限公司)
  • 2015年には、このメーカーのドローンがホワイトハウスに侵入して大問題になった
  • 2017年には、中東のテロ組織で広く活用されていることが知られるようになった。
  • 同年には、アメリカ陸軍での使用を取りやめる決定が下された。(ただし有用な用途やさまざまな要素のため、現在もアメリカ国家全体でDJI製品を排除するまでには至っていない)
  • 2019年には日本でも海上保安庁がDJIの採用を取りやめる方針を決定した
  • 2021年より日本政府でもDJI製ドローンの採用を取りやめる方針を発表した

中国のメーカーであるということは、中国の法律上、中国政府が情報を求めたら、DJIの得た・得られる情報は全て国家に提出しなければなりません。つまり、日本中世界中いたるところで飛んでいるドローンで得た情報が、すべて中国政府に把握されている可能性も考える必要が出てきます(…可能性ではなく確実な「前提」と言っても差し支えないかもしれません)

それを信じる信じないはともかく、少なくとも日米の安全保障に関係する部署の方々は、避けるべきことだと考えているようです。

それでもルールを守ればドローンを使うこと自体は禁止されていないし、登録制になることでメリットも生まれる

そもそも、規制強化だなんだと言っていますが、個人で飛ばそうと思えばちゃんと飛ばせる環境にはなっているわけです。

  • ドローンを買ったらまず機体登録をする(2021年12月20日から登録開始)
  • 人口密集地、夜間、目視外、などの条件下で飛ばす場合は、ヒモ(30m以下)をつけて、飛行範囲で他の人にぶつからないような措置をすればよい(立て看板で「ドローンを飛ばしています」と周知する等が想定されます)
  • 同じ条件や目的で、かつヒモを付けない使いかたをしたい場合は、事前に申請を出して許可を得る(従来どおり)

と、このように、それなりに危険や悪用される恐れがあるのでキチンと段取りを踏んで下さいね、というだけの事であって、ドローンを使用したら罰せられるようになるとか、そういう話では無いんですね。

そして登録制ということは、車や自転車と同じように、盗難にあった場合などの備えとしても有益な仕組みと考えることも可能です。ドローンの購入者・使用者が機体番号を自分で控えておくだけでなく、国家でナンバーを把握して管理しておいてもらえば、盗難されたドローンの持ち主がすぐ割り出せますし、何らかのトラブルで落下したドローンを誰かに拾われて、ネットオークションなどで売買されてしまうような危険性も大幅に減ると思われます。

結論:ITの専門家として、今回のドローン登録制度を歓迎

この規制強化は、今後のドローンによる運送やその他さまざまな産業用途、あるいは個人用途などへの活用を阻害するものではなく、むしろ真っ当な人間にとって使いやすくするものであり、さらに一般人への犯罪被害を防ぐ防犯効果が見込めるものだと考えます。一市民としても、ITのプロの目線でみても、歓迎すべきニュースだと感じました。