仮想空間「メタバース」各社のサービスが流行るか否かのチェックポイント
話題になりつつある「メタバース(仮想空間)」だが、話題先行で魅力はあるのか
Facebook社が名称を「Meta」に変更し仮想現実への投資をすると発表して以来、ここ1~2週間で急速に話題として挙がりつつあるのが仮想現実世界「メタバース」です。概念としては全く新しく無いのですが、ネットメディアを中心に「ビッグウェーブにしよう!」という動きが活発になっており、丁度いいのでまとめ記事を書いて置こうと思います。
結論から言いますと、最終的に生き残るサービスはごくわずかでしょうね。人間1人の使える時間は限られているので、「その価値がある」と認められるためには、ちゃんとした理由が必要です。一過性の小さな「流行り」はあるかもしれませんが、継続するためには普遍的・不変的な「魅力」が必要だと思います。
メタバースとは
広い意味では「仮想現実空間世界」といった訳になるかと思います。すでに世界には数多の仮想現実(VR)・拡張現実(AR)を活用したサービスが存在しますが、どちらかといえば「現実世界の拡張ではない、まるっきり架空の物語世界や建築物を置ける空間などに、ユーザーの分身である「アバター」と呼ばれるキャラクターを生成して活動させるタイプ」のものを指す言葉として使われる傾向があるようです。
当記事では、メタバースに関するサービスを語る上で、類似するサービスとして従来のVR・AR関連サービスについても、参考情報として引用して解説を行います。
ネットサービスが受け入れられる為には「利便性」「娯楽性」「快適性」が重要
前項で書いた「魅力」について、さらに具体的に書くとすればこの3点になります。すごく便利で日常的に使えるもの(GoogleMapなど)か、やっていてすごく楽しいもの(マインクラフトやMMOなどのゲーム)で、しかもそれが「快適」に使える事が重要になります。
つまり、準備や使用方法が複雑すぎて分かりにくかったり、基本的な操作や動作がモッサリ遅すぎたり、高価すぎる機材が必要だったり、一回の利用ごとの所要時間が長すぎたりすると、コンセプトが良くても、ほとんどの人には使ってもらえません。仮想現実(VR)については既に過去の成功事例や失敗事例がたくさんあるので、詳しい人なら各社が何らかの「仮想現実(メタバース)サービス」開始した時点で成否がある程度わかってしまう分野かと思います。
過去および現在の「仮想現実」活用サービスの成功例(VR、AR含む)
【利便性の勝利】Google Map(グーグルマップ)
これも一種の仮想現実(VR)、拡張現実(AR)のサービスですね。流行るとか流行らないとかのレベルを超えて、すでに世界中の多くの人の暮らしの一部になっています。地図だけでなく、実在の店舗の評判や、駅やバスの路線情報、車道の混雑状況、現地の写真を元に実際にその場所を歩いているかのようなVR空間(ストリートビュー)も備えています。
Facebook改めMetaがメタバースの分野に55億円の投資をするそうですが、Googleとどのように違った切り口からサービスを提供するのか、非常に楽しみです。こういった利便性の面からでは、おそらく勝負にはならないでしょうし…
【娯楽性の極地】マインクラフトや、FF11/14などのオンラインゲーム
生活での利便性という点ではなく、趣味や娯楽の面からVRやARに没入させるという手法も強いです。
インターネット上に作られた「世界」に入り込んで、建築物や料理などを作ったり、化け物(モンスター)と戦ったり、昼夜の区別があって就寝したり、ゲーム内貨幣で経済が回っていたり、まさに「もう一つの世界」の住人として、毎日何時間も画面の中で過ごす人も多いです。
マインクラフトは世界中でユーザーが1億人を超えていますし、国内で最もプレイヤーを集めた「ファイナルファンタジー11」の最盛期は数十万人がその「バース(世界)」に接続して自分の分身である「キャラクター」を操作していましたから、これも充分「メタバース」の成功例と言って良いかと思います。
【利便性と娯楽のバランス】ポケモンgo、ピクミンブルーム等 AR系スマホアプリ
前述のマインクラフトやファイナルファンタジー等は、奥行きのある世界や大量の要素を楽しめる代わりに、まとまった時間やそれなりの機材を必要とします。そのため、誰もが持っているスマートフォンでより手軽に体験できるタイプのVR・ARコンテンツもかなりの需要があります。
有名なところでは社会現象・社会問題にもなった「ポケモンGO」や、最近では「ピクミンブルーム」などもジワジワ人気が出てきています。実在の土地や建物などと重なるように存在する仮想現実世界を移動して、ペットを探したり、捕まえたり、散歩さえたり、仕事や戦いをさせたり、といった内容が人気のようです。
過去のメタバース系サービスの”失敗”例
以下は、私の独断による「失敗」の例です。実際には収益がある構造であったり、得るものがあったりするとは思います。ともかく名を残した以上は完全な失敗ではないと思います。が、話題が盛り上がった割には、比較的早期にブームが終わってしまったサービスをここでは反対の例として挙げさせて頂きます。(関係者の方々には、申し訳ありません)
セカンドライフ
セカンドライフの世界に行こう!と広告代理店の宣伝などが先行して、一時の流行になりました。「セカンドライフで稼ごう!」などの書籍もバンバン出版されていましたね。ですが、「実際に中に入って何をするの?」という根本の部分が薄かったので、多くのユーザーがあっという間に飽きてムーブメントも終了してしまいました。
とはいえ、現在もサービスは継続しており、根気強く作られ続けた小物や建物や服装や様々な種族のキャラクターが存在していますし、活かし方次第ではもう一花咲かせる展開もあるかもしれません。私としては、ユーザーのモチベーション(目的、意欲)をどう与えるか次第かな、と思います。
セカイカメラ
かなり前にサービス終了してしまいましたが、コンセプトとしては非常に興味深いサービスでした。実在の世界に向かってスマートフォンなどのカメラをかざして、その中の世界に情報タグをどんどん貼り付けて皆で共有するサービスで、日本のARサービスの先駆者でもありました。
Google Mapと違い、存在する情報のほとんどがユーザー任せだったのが敗因かな、と私は考えています。Google Mapのように、公式の情報を多く取り込んで、情報の「量」と「質」を確保できていれば、プラットフォームとして生き残れたかもしれません。ですがそれはGoogleと真正面から対決する道なので、やはり戦略として難しかったかも…
仮想現実(VR)/拡張現実(AR)を題材にした有名作品
とりあえず題名だけ挙げておきます。後で追記予定。アニメが多いのは私自身の嗜好ですね。
マトリックス(映画)
ソードアート・オンライン(映画/アニメ/小説)
サマーウォーズ(映画)
龍とそばかすの姫(映画)
電脳コイル(NHKアニメ)
まとめ
繰り返しますが、仮想現実関連のサービスは、便利かどうか、楽しいかどうか、使う上で障害が無いかどうか、が重要です。
今回の「メタバース」関連の話題を追っていると、さっそく「とりあえず場を用意したから君たちで勝手に盛り上がってね!」という、よくあるダメなパターンのサービスがチラホラ湧いて出て来ているようですが、
運営側がどれだけコストを掛けて、良いものを提示できるかどうか、それが分かれ目になると思います。まあ、仮想ではない現実世界でのサービスやマーケティングと、企業がやるべきことはあまり変わらないだろうと思います。