インターネット接続・設定代行でのチェック項目・作業フロー【プロ仕様】

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こんにちはパソコンサポート仙台宮城・店長の平山です。

インターネット回線のタイプで異なる接続の方式・配線の方式・設定の方法

お客様から「インターネット設定を代わりにやってください」とご依頼を受け、いざ現場に来た場合、やることは「いつも同じ」とは限りません。さまざまなケースや組み合わせが存在するため、確認すべきこと、留意すべきことは多いです。

今回の記事は、そういった「インターネット設定代行」という仕事について、プロが行う基本的な分類や確認事項などをまとめたものです。プロを目指している方や、または現在従事している方の参考になれば幸いです。

【ご注意】今回は、一般の方向けの記事ではありません。
はじめにお知らせいたしますが、「この記事を見て作業すれば素人の方でもインターネット設定が出来る」という内容ではありません。ご自身でインターネット設定の作業をされる場合は、それぞれのケースごとに回線業者などから配布された手順書、マニュアルがあるかと思いますので、そちらをご参照ください。マニュアル通りでうまくいかない、組み合わせが複雑で把握しきれない、分からない、といった場合は、詳しいプロにご依頼ください。

ご家庭・職場における主なインターネット回線の種別

お伺いした先のお宅やご職場でどのようなインターネット回線をご利用になっているのか、場数を踏んだプロであれば5分程度で把握します。パパッと使用している機器を確認し、その時には同時に脳内で以下のようなことを考えています。(考えていない業者もいますが、少なくとも自分は色々な今後の可能性を考えながら対応を進めています)

固定回線

  • 光インターネット回線…現在もっとも主流で安定しているインターネット接続方式。ただし事業者ごとに、モデムのみ配布/接続設定前のルータ配布/接続設定済のルータ配布、などなど細かい仕様が異なる。開通工事の際に現場作業員が基本的な設定をサービスで行っているパターンもある。
  • ADSL回線…最長2024年で廃止の決まっている回線。2000年代にYahooBB!主導の大きなキャンペーン(他業者も追随したブロードバンドインターネットサービスのさきがけ)があった為、未だ継続利用している家庭も多い。信号が極めて不安定なため、それまで安定使用できていたものが、ある日を境に全く繋がらなくなる事も多い。その反面、スプリッタ(分配器)の交換や配線の短縮化、家庭内で使用する電話ジャックの変更などであっさり繋がる場合もある。
  • ISDN回線…最長2024年で廃止の決まっている回線。NTTが光回線普及の前に「未来の主要回線」「電話加入権を買わずに電話番号を増やせます」等として強く販促していた為、特に事業所などで継続仕様している場合が多い。旧式の接続機器(ターミナルアダプタ:TA)はLAN経由での設定が出来ず、直接シリアルケーブルで繋がなければならない機種があり、トラブルが発生した場合の対処が比較的困難である
  • アナログ回線…電話回線とアナログモデムをモジュラーケーブルで繋いで使用する。耐用年数を超えた旧式パソコンとソフトウェアで限定的に使用されているケースが、極めて稀だが存在する。
  • ケーブルテレビ回線…地元ローカルテレビ局が、番組放送用の有線ケーブルをインターネットに流用する形で提供する回線。有料TV放送、インターネット、その他のサービスを複合して提供している場合が多く、部分的な解約や乗り換えが困難のため、継続利用している家庭も多い。

モバイル回線

  • モバイルWi-Fiルータ…おもにドコモやソフトバンクなど、携帯事業者から持ち運び式の小型のルーターをレンタルまたは買い切りで入手して使用する方式。インターネット側の設定は不要だが、端末側でWi-Fi接続設定と、契約コースに合わせて通信量を抑える設定を心がける必要がある
  • スマートフォンのテザリング機能…手持ちのスマートフォン回線をPCに流用する方式。単身赴任や短期出張などで利用人数と利用する量が少ない場合に、限定的に接続するために活用する場合が多い。使用するスマホとノートPC(内部の無線LANアダプタ)との組み合わせ次第で相性問題(不具合)が起きやすい傾向がある。
  • タブレット等端末と同時にSIM契約…電気店や携帯ショップでタブレット端末を購入し、通信用の内蔵SIMを同時契約した場合。基本的にその端末でのみインターネットを利用する際の選択肢だが、ショップで勧められるまま、自宅に固定回線があるのに(外出時の使用もする予定がないのに)余計に月額料金を払って加入しているケースが多々ある
  • 設置式のWi-Fiルータ…ソフトバンクAirなどの、モバイルルータを大型化、設置式にして有線LANポートも用意した月額接続サービス。安価で電源ケーブル類も少なくスマートに見えるため人気があるが、通信量の上限や、通常のルーターより制限が多く(ネットワーク対応プリンタなどの接続を中継しない場合がある等)これを中心にホームネットワークを構築しようとする場合は注意が必要

マンションインターネット回線

  • 自動接続設定方式…部屋内に設置されたLANポートに接続すれば即使用開始できるタイプ。壁にジャックが設置されている場合や、接続モデムを配布されている場合もある
  • 特殊設定方式(IP固定制)…配線を行った後に、事業者の用意したマニュアルに沿って固定IPアドレス設定などが必要となるタイプ
  • 特殊設定方式(事前登録制)…配線を行った前後で、事業者のサイトで物件名・部屋番号・氏名などを登録して初めて使用可能となるタイプ
  • LAN配線方式…マンション全体の集合装置から、LANケーブルで各部屋まで配線されているタイプ
  • DSL配線方式…マンション全体の集合装置から、電話用のアナログ回線を経由して(DSL方式)各部屋にネット回線を通しているタイプ。別途DSLモデムが配布されている。
  • Wi-Fi方式…各部屋ごとに、Wi-Fi接続用のSSIDとアクセスキーを配布しているタイプ

その他・特殊事例

  • 業務用の特殊ネットワーク等…全国規模の企業の出張所や支店など拠点間でVPN接続を行って一括管理していたり、社内サーバーでインタネットの利用を監視/管理していたり、何らかの事情で固定IPコースで契約されていたり、様々なパターンがある。
    そういった場合は通常、専任のシステム管理者が置かれているため、外部業者への設定依頼は行われにくいが、ご依頼があった場合は現状調査や仕様や設定の変更を行う際に、多めの時間と費用と各方面の許可が必要になる。

ネットワーク環境における要チェック事項

必要情報、管理状況はどのようになっているか

インターネットに接続するためのプロバイダ設定情報や、事務所であればネットワークに関する情報(IP構成など)が、書面として残っているかどうか、現地で調査や初期化によって作業が可能な内容かどうか、管理者へ取り寄せが必要かどうか、といったことを確認します。依頼を当日実行可能かどうかの重要なポイントです。

Wi-Fiアクセスポイントの有無と種別

ネットワークの一部にWi-Fiを使用しているかどうか、アクセスポイント(AP)として利用している機器の位置、セキュリティ方式、電波強度、レンタル品か所有品か、不要に2台,3台と設置していないか(重複して置いているご家庭が実は多い)、といったことを確認します。

ゲートウェイ(インターネットとの接続口)はどこにしているか?変えるべきか?

一般的には、インターネットへの「接続ID」および「接続パスワード」をどの機器に入力してネット接続の認証を行っているか、という事になります。多くの場合は、回線事業者から提供されているモデム内蔵ルータか、あるいはその直下に接続したWi-Fiルータもしくは有線LANルータがゲートウェイとして利用されますが、中にはメインのパソコンに接続設定として入力している(PC1台のみの接続となるやり方)ケースも珍しくありません。

特段の事情がなければ、以後の管理のし易さ、共有のし易さなどから、なるべく回線上流に位置するルータ機能をもつ機器をゲートウェイとして設定すべきです。

2重ルータ構造にはなっていないか?

回線事業者提供のルータと、その後に後付したWi-Fiルータが混在する場合、どちらが主であるか明確にセッティングされておらず、それぞれに有線接続されたPC同士のネットワークアドレスがチグハグとなり、データ共有やプリンタ共有が出来ていない場合が多いです。

通常はWi-Fiルータ等を「APモード」に切り替えるなどして、主従関係とネットワークアドレスなどを明確にすべきです。

HUBが必要以上に多段構造になっていないか?

事業所など、LAN配線をフロアや各社員の端末まで這わせるために、LANケーブルとHUBを継ぎ足しながら隅々まで這わせている場合も少なくないです。その継ぎ足しした中で10BASE-Tなどの古い規格のものが混じっていたり、ケーブル長に配慮が無かったり、露出部が養生されていなかったり、不必要に多段階にHUBを経由していたりする場合は、ネットワーク障害の原因になりやすいです。

なるべく簡素化し、かつ機器とケーブルを最新世代で統一すべきです。全てはムリでも、少なくとも応急処置として、業務上の重要箇所だけでも正規化しておきたい所です。

ローカルIPアドレスの管理方法は静的か動的か?または混在させるべきか?

各パソコンやWi-Fi機器へのローカルIPアドレス配布方法として、一般家庭であればほぼルータのDHCP機能によって(動的に)無意識的に行われており、その方が利便性も多いですが、ネットワークプリンタ(大型複合機含む)やデータ共有サーバ(NASや個人PCなど)を利用する事業所では、(静的に)機器ごとに固定のローカルIPアドレスを設定して管理しているケースも多いです。

また個人宅であっても、自宅兼事務所でのSOHOであったり、屋外監視やペットの見守り用にWEBカメラを設置していたり、スマート家電(IoT)を多く導入している場合などは、動的なIPアドレスと静的なIPアドレスを混在して管理しなければならないケースがあります。(1をゲートウェイとした場合に、2~99をスマートフォンやタブレットなど出入りの多いモバイル機器にDHCPで配布し、100~254の中から任意の番号をネットワークプリンタ、Webカメラ、NAS、各スマート家電などに手動で割り当てる)

こういった事を意識せずに「なんとなく」でやっている業者も多いですが、それが原因で料金のムダや後々の混乱が起きるケースもあります。

上記のような現状を把握したら、実際の設定作業へ

回線の種別、接続方式、ネットワーク仕様を判別する
まず全体の構成を把握します。
設定のために必要な情報を調査する
どの機器の配線や設定をイジる必要があるか特定できたら、アクセス方法(機器のIPアドレス、ログインID、ログインパスワード)と、入力すべき設定値(プロバイダの接続ID、接続パスワードなど)を特定します。

お客様側で管理されている場合は問題ありませんが、書面を探す・Pingで該当IPを調べるなどの追加調査が必要であったり、それでも不明な点が多すぎて初期化が必要な場合もあります。

そしてきちんと調べた範囲の事を、ネットワーク情報として書面にします。プロであれば、その場限りのことではなく、後日のお問合せや機器交換や設定変更に対応のしやすさも考えて、事細かに記録すべきです。
配線および機器の設置・設定
必要な情報が揃ったら、正しく配線をやり直し、機器を接続し、外面スイッチによる設定、及びPCやスマートフォンから内部設定を変更するなどの具体的な処置を行います。
各端末の設定
ネットワーク全体の通信環境が整ったら、各パソコン、モバイル機器、プリンタ、NAS、ネットワーク対応家電(ゲーム機、テレビ、スマート家電)などのネットワーク上の末端装置を設定します。
開通確認
各機器で、必要な機能が正常動作しているかどうか、複数回ずつ確認します。

通常通りの設定で開通しない等、インターネット接続に問題がある場合は

理屈の上では開通するはずなのに、うまくいかない場合は、問題箇所をチェックします。

  • 回線事業者から提供されているインターネット設備部分
  • 契約コース、契約期間、使用条件の問題
  • ケーブルそのものや接続部分など断線の有無
  • 各通信機器、PCなど各端末側の機械的故障
  • 設定ミス、あるいはプロバイダ側での設定変更
  • 障害情報、メンテナンス情報

問題発生時、これらをどのような順で見ていくかは、以前の記事を参照
ネットが繋がらなくなった時プロはドコから見る?問題箇所チェックの優先順位、解決の流れ

さいごに。一般の人が今回の内容を把握する必要はありません

冒頭の繰り返しになりますが、今回の記事は、一般の方が「インターネット接続設定をしたいから参考にする!」という類いのものでは、ありません。

基本的な国家資格である「情報処理技術者試験」合格者程度の知識のある方向けに、専門用語の解説などを省きつつ、「インターネット接続を代行する業者としては、こういった知識が必要です」という専門知識をまとめたものです。それも入り口部分です。実際には、パソコン上でどのように操作するか、機器ごとの仕様、特性(クセ)、ノウハウ、TIPSといったものが、大量にあるわけです。

  • 各メーカーのルータのIPアドレスやログイン情報の初期値(NTTなら192.168.1.1、Softbankなら192.168.3.1が多いなど)
  • 大型複合機の管理者用パスワードの初期値(0000や0123456789などが多い)
  • などなど

例えば、脱サラで「パソコンのお助けマン」を始めようとお考えの方は、こういった経験や知識や場数といったものをどうやって得るのか、そこが問題になってきますので、キャリアや経験をどうやって得るのか、真剣に検討すべきかと思います。

なにしろ、自分の家で自分の持っている機械をいじるのと、職業として多数の環境に飛び込む場合では、かなりのギャップがあります。今回の記事で少しでもその差が埋まれば良いとは思いますが、一朝一夕で身につくものでもありませんので、まずは独立する前に何らかの企業やお店で採用されて、OJTによる修行と勉強をすることが最優先ではないでしょうか。