脱サラでのパソコンサポート業の独立開業をオススメしない5つの理由【2015年版】

こんにちは、パソコンサポートの平山です。

学生時代に起業して以来、パソコン修理、出張指導(家庭教師)、設定代行などの仕事を続け、16年目になります。(平成27年2月現在)

パソコンサポート・パソコン修理・パソコントラブル対応のプロ業者

最近、当サイトに「パソコンサポート 起業」「パソコン設定サービス 独立」といった検索キーワードで辿り着く方がチラホラいらっしゃるようなので、この業界で独立を考えている方々へ、私の立場からの意見を書いておこうと思います。

はじめに

まず始めに申し上げておきますが、この商売、甘くないです。ちょっと会社や自宅でパソコンをいじった経験があり、自分の周辺で「パソコンに詳しい人」と有名になったぐらいでは、務まりません。商売にする場合は、全くの別物だとお考え下さい。

実際、続々と参入しては、いつのまにか消えていく業者が非常に多いです。また、現役の業者でも、別の事業(Web制作などのIT関連事業や、パソコンと直接関係ない便利屋事業など)と兼業していたり、利益の高い分野や顧客層だけに特化していたりと、様々な工夫をして、生き残っている方がほとんどです。それでも「機会があればやめたい」と考えている方も存在します。

否定的な書き出しで申し訳ありませんが、貴方が今後の生活と人生を賭けるつもりでいるならば、ここであえて苦言を申し上げます。「パソコンサポート 独立」で検索すると、「片手間でカンタンに独立できますよ~」と煽っているブログ等も出てきますが、そんな事は無いです。どんな商売でもそうですが、甘い考えでやっていける仕事なんて無いと思います。うかつに独立開業してしまうと、家族やお客様に迷惑が掛かるかもしれません。

以下に、「パソコンサポートの独立開業をオススメしない理由」を挙げていきますので、それをご覧の上、慎重にご検討ください。

脱サラでのパソコンサポート業の独立開業をオススメしない5つの理由

(1)競合が多い

パソコンサポート業での起業、独立開業を考えている方の多くは、「元手が少なくて良い」「腕と知識だけで出来る」という利点を考えてのことかと思います。が、それは誰にとっても同じです。参入障壁が低いがゆえに、競合する他者が非常に多い業界と言えます。

私が開業した当時は、Windows XP の爆発的普及の前で、一般家庭にパソコンはまだまだ普及しておらず、「一般家庭向けのパソコンサポートサービス」という商売も、競合がほとんどいませんでした。が、それから16年。いまや、パソコンサポートの専門業者以外にも、電器店、便利屋、Web制作業者、システムエンジニア、オフィス用品店等々でも、サポートを請け負っています。大都市であれば、多数の競争相手が存在します。それらの同業者の中で抜きんでるためには、差別化するための何らかの武器が必要になるでしょう。

たとえば、他の業者がやらないような案件でも請け負う(その分リスクは高い)とか、SEO等の宣伝活動が他者より上手いとか、資金と時間に余裕があって固定客が一定数つくまで数年間は低収入でも大丈夫だとか、他にはない特別な技術があるとか、その地域では競合がほとんどいないとか、他に本業・収入源があるとか、とにかく「競合に負けない何らかの事情や強み」が無ければ、軌道に乗せる事は難しいと思います。

(2)パソコンの普及率(利用率)や価格の低下

スマートフォンの登場以降、パソコンの出荷数は減り続けています。スマホやタブレットなどを含む、IT機器、インターネット端末自体の普及率は増えていますが、デスクトップパソコン、ノートパソコンについては、徐々に普及率・利用率が下がって来ています。

また、長らく続いた円高の影響、技術の進歩、国際的な価格競争などの結果、パソコン自体の値段が、かなり安くなりました。10年前はパソコンと言えば10万円~30万円出して買うものでしたが、いまや新品ノートパソコンが2万円台から、一般ご家庭レベルでは必要十分な性能を持つものが売られています。パソコンより場所を取らず安価なタブレット型端末の需要も、ジワジワと増してきています。

そうなると、壊れたパソコンを高い値段で直すより、新品のパソコンやタブレットに乗換えてしまおう、と考えるお客様が増えているのも、当然の流れです。事実、当店でも、修理の依頼件数自体が減って来ていますし、業界全体における修理代金の相場も下がって来ています。
(なお、デスクトップPCなら直せるが、ノートパソコンは直せない、というレベルの方は、そもそも勝負になりません)既存の業者でさえ、生き残りの戦術を転換するべき必要に迫られ、将来を楽観視できない状況なのです。

XPパソコンの乗換え、引継ぎ
一時期大量に普及したWindows XPのパソコンですが、もはや修理するより最新OSのパソコンに乗り換えよう!と考えるお客様の方が多いです。中古価格が修理費以下であることもザラですから、修理の需要そのものが激減しています。

(3)幅広い知識が必要で、常に学習し続けなければならない

当然のことですが、新しいOSやOfficeソフトが出る度に、習熟しなければなりません。スマートフォンが流行れば、各OSやメーカーごとに、精通しておかなければなりません。Wi-Fi等の通信事情や、ITセキュリティ事情も年月と共に変わります。とにかく、常に勉強が必要です。IT関連の資格を取るにしても、独学するにしても、時間と費用が掛かります。毎年のように出てくる様々な技術や機械の知識について、終わりの無い追いかけっこです。

例えば、インターネットプロバイダーひとつ選ぶにしても、どこでも同じという訳にはいきません。

  • すぐにプロバイダ契約が必要な場合に、クレジットカードを使わず、FAXで申込み、即日で仮ID発行できるプロバイダは?
  • 「ぷらら」をご利用のお客様の場合、オンラインゲームが遮断されてしまうケースがあるが、その理由とは?
  • 「YahooBB」から接続IDや接続パスワードが記載された書面が送られて来ていない場合は、どうすればいい?
  • NTTの回線料金と同時引き落としできるプロバイダで、もっとも安い所は?
  • 海外で日本のTVを見る装置「SlingBox」のご利用を検討中の場合、プロバイダ選びで注意することは?

私がここ一年、プロバイダ関係のトラブルに絞り、今すぐ思い出せる事案だけでも、こういった知識が必要でした。他、パソコンの修理にしても、設定にしても、各種ソフトの指導にしても、数えきれないほどのノウハウやTIPS、経験が必要です。

macのトラブルや設定代行も
Windows機だけでなく、Machintoshのご相談も多いため、対応するための知識や技術が必要です。

「今まで自分が経験したことしか分からない」という方は、すぐに行き詰まるでしょう。貴方が自宅や会社で経験したことは、限りなく存在する環境の中の、たった一例でしかありません。独立してやっていくのならば、業務として、多数の状況に対応してきた実績が求められます。「Macは扱ったことがありません」「Androidスマホは分かりません」と言う業者も、世の中に多数存在しますが…そういった業者が繁盛しているかどうか、技術的に信用されるかどうか、お考え頂ければと思います。

(4)コミュニケーション上のトラブルが多く、こじれやすい

パソコンやIT機器は、お客様にとって、わけのわからないブラックボックスです。何か変わった事があれば、まず真っ先に、対応した業者が疑われたり、責任を問われたりします。当方に全く責任が無い場合でも、お客様には原因が分からないわけですから、「以前にあの業者が来てコレをいじった」「そして今、コレがおかしくなっている」という単純明快な因果関係を根拠に、クレームが寄せられる場合があります。それは仕方の無いことで、この仕事をする以上、避けられないことです。

その度にケンカ腰になってしまったり、イラついてしまうような方は、この商売に向いていません。自分に責任が無くとも、お客様の仰る事に耳を傾け、辛抱強くご理解頂けるよう努めなければなりません。

「パソコンに詳しくない人」の目線や立場で考え、対応をしなければなりません。それがサービス向上でもあり、自分の身を守る為でもあります。

また、誤った知識を持った知人・別業者からの横やりも、よく入ります。
例えば、「パソコンの動作が遅い!」というご相談のお客様について、きちんと原因を調査した上で、傷んでいるハードディスク交換、メモリ増設を実施した後に、『知り合いが言うには、不要なデータを消すだけで動作が早くなったハズなのに、余計な料金を取られた!』と苦情を持ち込まれたケースもありました。(その際は、取り外した故障ハードディスクそのものと、検査結果のスクリーンショットを印刷したものを持参して、ご説明し、ご納得頂きました)

そういったトラブルや行き違いに備えて、そもそもトラブルを起こさない為の技術を磨いたり、リスク回避するためのお客さまにお渡しする書面の整備、アフターサポート時のトーク術など、ありとあらゆる努力と工夫が必要です。パソコンやITの知識だけでなく、接客業としての経験、センス、コミュニケーション能力が重要です。

(5)ハンパな知識や対応では、お客様と業者の双方が大きなリスクを負う事になる

  • 業者がパソコンのメール設定を間違えた為に、大事なメールが届いていることにお客様がずっと気づかなかったり・・・
  • アドウェア(広告プログラム)を削除する方法が分からずに、お客様のデータごと初期化してしまったり・・・
  • 申し込むべきプロバイダのコースを間違えてお知らせした為に、お客様のインターネット開通が数週間遅れてしまったり・・・
  • 不良率の高いメーカーの部品を修理に使い、数か月でまた同じ故障をさせてしまったり・・・

これらは、当店ではない別の業者で、実際にあった例です。お客様が別の業者にサポートを依頼した結果、上記のような状況になってしまい、それから当店に改めてご依頼頂いて、当方で正しく対応し直したケースです。

親戚や同僚相手にサポートをしているだけであれば、不具合があればすぐ言ってもらえますし、その後のアフターケアもやりやすいです。しかし、一般ユーザー様相手の商売では、そうはいきません。こういったご迷惑をお客様にかけてしまったら、場合によっては、裁判沙汰にもなりえます。

結論・他の仕事と同じ。未経験で独立できるほど甘くない。まずは経験を積みましょう。

もしも「ラーメン屋さんを始めたい」という起業計画であれば、まずはどこかのお店で修業することを、ほとんどの方が考えると思います。パソコンサポートも同じです。まずは他のプロの下で、経験と実績を積むことをお勧めします。

世の中には、まったく別業種のサラリーマン生活を送っていた方が、ある日突然思い立ってパソコンサポート業を始めるケースも多いようですが、大体の場合、うまく行きません。ある程度の経験やノウハウ(パソコンの知識だけでなく、特に商売人としてのスキルが重要)を身に着けてから、独立を考えた方が良いのではないでしょうか。

素人でも勤まる仕事は、なかなかありません。どんなに簡単そうに見える仕事でも、プロなりのやり方、考え方、技術があります。これは全ての商売、すべての仕事に通じることかと思います。