【脱サラ】パソコン修理やPCサポートの独立開業を避けるべき5つの理由【2021年版】

※この記事は過去(2015年2月)に投稿された人気記事について、記載が古い部分などを訂正および再編集して、再度アップロードしたものです。

パソコンサポートせんだいみやぎ・パソコン修理・パソコントラブル対応のプロ業者
こんにちはパソコンサポート仙台宮城・店長の平山です。

個人の開業や副業で「パソコンの先生」は良さそうに思えるが、閉店・倒産・離職がかなり多い

パソコンの設定代行やパソコン修理で起業する人は昔から一定数います。そしていつの間にか消えていくパターンが多いです。便利屋業や個人タクシーや飲食フランチャイズなどと同様に、手軽な副業や開業のネタとして人気がありますが、実際やってみると、それほど甘くないという事実にブチ当たってしまうわけですね。

今回の記事で、その「実際やってみると」の部分をその道のプロが開示しますので、「自分でやってみよう!」と考えている方々への参考になればと思います。この記事をみて「じゃあやめよう」と結論づける方もいるでしょうし、解決課題として「じゃあ自分はこうしよう」と考える方もいるかもしれません。その後は、記事を読んだ皆さん次第ですね。

特技を活かして第2の人生のはずだったのに・・・となる前に知っておきたい5つのこと

新規開業に向かない理由(1)対応範囲の多様化および専門化。広く深く知らないと仕事にならない。

昔はパソコンといえば扱いの簡単なタワー型ばかりでした。家庭用ドライバーで側面のフタを開け、異常箇所を特定し、共通規格の汎用パーツを取り替えれば修理完了!…といった具合に、技術力がそれほど無くとも、成立するお手軽な仕事でした。

ですが現在では、お客様のお宅やご職場にあるIT関連機器は、タワー型デスクトップパソコンだけではありません。むしろ少数です。

パソコン組み立て
企業のオフィスでもタワー型のパソコンは数が減る一方です。趣味でPC自作する人やPCゲーマーに好まれますが、トラブルが発生しても自己解決してしまう場合が多いです。

パソコンの修理やサポートを仕事とするのであれば、例えば以下のような様々なIT機器やサービスの知識を持ち、様々なトラブルに対応出来なければ、暮らしていくだけの収入が得られません。必ずしも以下の全てをマスターする必要はありませんが、守備範囲の広さがそのまま、売上やリピート率などに大きく影響します。

  • ノートPCの構造やパーツ全般
  • 液晶一体型PCの構造やパーツ全般
  • タブレットPC(iOS/Android/Windows/Chormebook)の設定
  • スマートフォン(iOS/Android)の設定
  • その他Apple製品全般(Mac、Apple Watch他)
  • Wi-Fi機器(据置ルータ、モバイルルータ、中継機など)
  • インターネット通信機材各種(光モデム、IP電話、ADSL、ISDN、格安SIMなど)
  • ウェブサイト運営(Html、サーバー、CSS、SEO、Wordpressなど)
  • ネットセキュリティ(暗号化技術、オンライン詐欺の手口、対策ソフトの機能)
  • SNS(LINE、Twitter、Facebookなどの各種便利機能)
  • テレビ会議システム(Zoom、Facetime、Skype、Facebook Messenger、Webexなど)
  • ウォークマン等音楽プレイヤー及びアプリ(iTunes、Music Center等)及びCD作成
  • ネット対応テレビや各種ゲーム機やFireTV他スティックPCなどメディア対応機器
  • 動画配信(著作権の知識、撮影、編集、アップロード、運営)
  • ネット対応家電(IoT)各種(スマートスピーカー、監視用/見守り用WEBカメラ、Wi-Fi対応液晶インターホン等)
  • ドローン、ドライブレコーダー、デジタルフォトフレームなど映像データの取り扱い
  • ほか
お客様からは実に様々なご要望を頂きます。それを断るか仕事に出来るかで明暗が分かれます。

パソコンサポートを看板に掲げるからには、様々な機器、様々な環境、様々な対象へトラブル対応を行う知識や経験や設備や器具が必要です。「一般人は大したことにITを使わないだろう」と考えていたら、大間違いです。人の活動が多様化し、様々な分野にITが浸透しており、人の趣味や目的の数だけ様々なITの対応が必要になります。

長年どこかで業務としてPCサポート業に関わっていたならともかく、別の仕事をずっとしていた人が、趣味として興味のある分野だけの知識で飛び込んでも、仕事にならないケースが多いです。後述しますが、この分野で新規参入して電話一本入るようになるだけでも大変なのに、「分かりません」「それは出来ません」を連発していては、商売として成立しません。

守備範囲をとことん広げるか、逆に1つのことに絞って地域で一番詳しいレベルまで突き詰めることで、商売の成功が見えてきます。が、その絞った1つが「タワー型パソコンを直せます」「ノートパソコンのメモリやHDDだけなら交換できます」程度のことでは、それ一本でやっていくには需要が少なすぎてキツいです。まず、以下のような知識と経験をまず積みたいところです。

参考記事:インターネット接続・設定代行でのチェック項目・作業フロー【プロ仕様】。ネットの設定程度ならカンタンだ!と思っていませんか?現場で実際に必要になる知識をまとめました。

参考記事:パソコン修理部品は、評価の高い新品パーツを選んで使用しています。【不良業者に注意】。修理に使用するパーツへの知識がしっかりしていないと後々トラブルになります。

理由(2)競合の更なる増加・価格競争。他人の土俵にいる限り底辺から抜け出せない。

ここ2~3年、コロナ禍で仕事を失った人が、便利屋系の個人事業に参入しています。ウーバーイーツなどのフード宅配サービスもその例ですし、他にも蜂の巣駆除、遺品整理、除雪、不用品買取などなど、身一つで出来る仕事が大人気です。パソコンサポートも例外ではありません。

そして時期を同じくして、便利屋系の個人事業主を多数登録させて、案件が入る度に売上から紹介料を取っていく「くらしのマーケット」等のオンライン紹介サービスも増えました。2022年現在、パソコントラブルサポート業の界隈は、以前よりさらに競合がひしめく魔境になりつつあります。

もしあなたが自力で集客できない(やり方を知らない)場合、そういった登録制サービス(以前は派遣会社が同じように仲介と中抜きをしていました)に頼る可能性が高いですが、そうするとほぼ純粋な価格競争になってしまって、最低賃金に近いかそれ以下の単価で働くことになる可能性が高いです。

最悪のパターンとしては、とにかく仕事が無いと経験も積めないので、他の人より料金を安く設定し、しかしやはりそれでは生活できないので、「基本料金」の表記だけを下げたまま、実際にはオプション料金を上乗せして…などの小細工を行い、かえって信用を失ったり、利用者からの苦情でサイトからの登録を抹消されたり…

また、紹介系サイトや誰かの下請けをしているうちは、商売で最も重要な「リピーター」が付いてくれません。一度目を紹介系サイトで頼んだ人は、次も同じサイトやアプリを開いて、改めて安い人を探す可能性が非常に高いです。他人の土俵で「仕事をさせてもらっている」うちは、本当に独立したとは言えず、実情は正社員より待遇の悪い、ただの非正規労働者と言っても差し支えありません。

つまり、営業力、言い換えれば競合を出し抜いて仕事を得る独自の技術や戦略が無ければ、いざ参入しても悲しい結末が待っています。社会保障もなく、移動手段やリスクも全て自分持ちで、バイト程度の収入(それも極めて不安定)という状態です。それでも続ける事で何かが残ればいいのですが、売り込むべき屋号も持たず、固定客も取りにくい構造のままでは、穴の空いたお玉で延々と水をすくい続けるようなものです。

チキンレースがしたくて退職・独立する人はいないと思います。が、分かっていても行き止まりに向けて走るしかない人も多いようです。

理由(3)広告宣伝力で大手や老舗に勝つには難しい。自分なりの強みが必要。

結局、どうやって暮らしていくだけの仕事を取ってくるかということに尽きるのですが、個人では大手に勝つことは非常に厳しいです。大手はすでに立派で広い敷地の路面店を持ち、持ち込みや販売なども幅広く行っていますし、ネット広告もリアル広告も打ちまくっており、ウェブサイトのSEOで上回ろうとしても、老舗は昔からの蓄積を活かして、検索表示の上位を独占しています。

個人でそれを覆してシェアを奪おうと思ったら、例えば資金をかけて広告をたくさん打つか、それ以外の独自の集客能力(例えば以下のような)が必要になります。

  • SEOやMEO等のネット広報戦略が上手い。WEB制作会社と同等レベル
  • DTPでの販促物制作が上手い。印刷デザイン会社と同等レベル
  • PCトラブル系の動画配信でチャンネル登録者数が多い
  • SNSでトラブル解決系のアカウントを持ち、フォロワーが多い
  • プレゼンが上手く、セミナーを開いて集客できるレベル
  • パブリシティでメディアを使うのが上手い。地域の文化人的立場
  • などなど。とにかく他を出し抜く「強み」が必要です。
一芸に長けていれば突破口もありますが、それで成功できる素地があるならそれを生業にすれば良いというジレンマですね

理由(4)お客様とのトラブル多し。技術力・対応力の蓄積が重要。

ハッキリ言うと、パソコンやIT機器のサポートは、特に誤解やクレームの多い分野です。お客様にとっては訳のわからないブラックボックスそのものなので、何か変わった事があれば「最近それに触ったサポート員」が真っ先に疑惑の対象になります。とはいえ、そもそも「原因や対処方法が分からない人」に向けたサービスなので、それも織り込んで対応していかなければなりません。

実際にどのようなトラブルが起きて、どのように対応しているのか、以下の記事にまとめてあります。きっちり対応出来るかどうか、パソコンの知識だけでなく、商売人としての経験やスキル、特にコミュニケーション能力がかなり求められますので、「パソコンに向かっていれば良い」という仕事ではありません。むしろ何より相互理解への努力が必要な仕事です。

ストレス耐性かも要りますし、軽妙に信頼へ逆転できる対応テクニックも必要です。

理由(5)オンオフをしっかりしないとプライベートの確保が難しいが、駆け出しだとムリをしがち

これも「理由4」の参考記事内で述べていますが、お客様が増えてきたら増えてきたで「現場以外の対応」が雪だるま式に増えていきます。電子メールやSNSの巡回とレスポンス、営業時間外の電話対応、料金をもらえないタダでの遠隔指導(ちょっと教えて!)などなど、こういった対応をうまく断れない・減らせない人は、あっという間に潰れます。実際に私は過去に心身をやられた同業者を何人も見てきました。

とはいえ、その「うまく断る」がとても難しいです。とりわけ、クレーム対応(たとえ理不尽なものであっても)を時間や内容でシャットアウトするのは普通の人にはかなり難しいと思います。下手に遮ろうものなら「誠意が無い!」とか「自分の都合で切るなどとんでもない!」とか、ますます燃え上がって大トラブルになりがちです。まして、仕事が少しでも欲しい、お客さんは1人も失いたくない駆け出し事業主は、ここが踏ん張りどころだ!と頑張って頑張って、お金にも健康にもならない部分で頑張り抜いて、やっぱり潰れてしまうパターンが本当に多いです。

こればっかりは、「そうならないようにしよう!」…としか私も言えませんが、自分なりの対策が考えつく人であれば、何とかうまくやっていけるのではないでしょうか。

最後に。悪いことは言わないので、もっとリスクの低い商売をご検討ください

私はこの仕事に特化してキャリアとスキルを磨き、マーケティングの戦術も色々と駆使して小規模ながら20年以上やりくりしていますが、本当に新規参入するにしては厳しい業界だと思います。もっとラクな業界はあると思いますし、この業界で成功できる能力があるなら、他業種ならもっと儲けられる、あるいはITに強くてコミュニケーション能力に長けていてマーケティングにも自信ありなら、独立しなくとも、かなり良い条件で就職しやすいのでは?と思います。

皆さまも身の振り方はよくご検討ください。